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ようこそハワイへ

21世紀を目前に控えてさすがに飛行機もFirst Classから、便宜上作られたBusiness Classというのが主流になりつつある。充分後ろに倒れる広めのシート、上下するフットレスト、この両方を使えば結構睡眠も取れる。長距離を飛ぶ時、例えば日本からアメリカの東海岸や、ヨーロッパの国国への旅には快適で贅沢な空間である。

一般客より早目にシートについて、出てくるシャンパンを飲む。適当に冷えたグラスの中で、こはく色の液体に数条透明な泡がはじける。ある種の予感、これから始まる旅へのあこがれと期待、その序曲にふさわしい一瞬を実感する。グラスの回収と時同じくして機は飛び立つ。日常としがらみを切り捨てるように機は急角度で上昇を続ける。旅の始まりこの一瞬は捨て難い。

ハワイへの旅もこんな手順ではじまった。何回か行く内にライフスタイルが変わる。無駄をそぎ落とす。けちになることとは違う。ディスカウントチケットが氾濫している時期はこちらを選ぶ。経験的に見て安いチケットの氾濫は、それだけ飛行機に空席があるからだ。私は5席・ワイフなら3席を確保して、食事を拒否してでも早々に長長と横になって寝る。

日本の何処の空港から飛び立っとしてもハワイへは、夕刻から午後10時頃までに飛行機は出発する。ハワイまでは7〜8時間機中で遅い夜食をとり、興奮して眠り損ねると機窓が白みはじめる。高度1万メートル空には決まって雲一つない。白みはじめたとはいえ未だ夜の帳が残る空は、漆黒からグレー、濃いブルーへとどんどん色を変える。
 
「東方」、ほのかに染まる紅、地球の自転に逆らって東へ向かって飛ぶ飛行機が、夜明けというドラマのスピードを倍加させる。紅はまたたく間に明るさと色の濃さを増す。夜の帳が押しやられた空はもう真青、紅はもっと濃い茜色に変わる。この辺たりが夜明けのドラマのクライマックスだ。
 大空に描かれた色彩の洪水、一瞬茜色の一角がはじけて金色の光が目を射る。当然経験したことはないが、極楽浄土への到来を想像させる。
「太陽のお出迎えだ」
季節によって多少時間が違うが、ショウの終演は飛行機のハワイ到着が近いことを知らせてくれる。


大空でのショーは観客に過ぎなかったが、ここからはあなたが主役だ。時差との関係で到着は現地の早朝、早朝は常夏の島での至福の時間だ。機から解放されたあなたは、空港内移動の手段として乗るトロリーの窓から吹き込む甘い花の香を含んだ心地よい空気包まれる。ハイシーズンには少し時間がかかる通関の手続きを万事終えて、お出迎かえのガイドからレイをかけられたら、もう「天国」への到来を実感できるだろう。
空港を出たら早朝驟雨に洗われた木々が、まだ露にキラキラ輝いている。

何処かの国の話。国境近くの峠に小さなトンネルがある。ここを通過するとき大きい荷物を持っては通れない。不要不急の以外のものはここで捨てる。という話がある。
そこに居合わせたわけではないが、その際どんな思いが交錯するのか。人によっては失うものに固執するあまり、人間としてのの尊厳を汚すこともままあろう。物質だけでなくここでは「我欲」まできれいさっぱりと捨てることができたらこれもまたすごい。人は時時こうして試される機会を持った方がいい。

ハワイへの道に人を試すトンネルなどない。滞在中は短パンにTシャツ、じゃぶじゃぶと洗って干せば明日は着ることができる。正装はアロハでよいが、紺ブレが一着あれば通年これで通せる。もう少しお洒落がしたい女性ならそこら辺に咲く花を手追って髪に飾ればよい。背広を100着持っていたという文化や日常が恥ずかしい。
 
ハワイでの生活は、「日の出と共に一日が始まり、月の出と共に一日が終わる」というのだろうけれど、この美辞麗句は既に都市生活の埋没した人が想像で発する「ことば」だ。1月は新月、月が顔を出さない日々のあることをすでに都会人は忘れている。

コンドミニアムはワイキキへの主幹道、アラモアナブルバードとアトキンソン通りの角に建つ。目の前がヨットハーバー、横がアラモアナのショツピングセンター、これ以上恵まれた地のりはない。

コンドの玄関からショツピンクセンターへは、アトキンソン通りを横切ることになる。右へYMCAの前、左アラモアナブルバード交差点といずれも、15メートルとは離れていない場所に横断歩道と信号機がある。
買い物をして手が塞がっている時などつい横着する。横断禁止道路を「まあええか」と渡る。さすがに「(孫)と一緒の時は絶対横着はしないように」とワイフと勝手な話しながら・・・
強い 風が道路を吹き抜ける。手に持つ荷物を落とす。WOW WOW!!
 
車が駆け抜ける。「バカヤロ!!!!」一瞬でも通路を妨害された運転手は罵倒する。意地の悪い運転手なら警笛を鳴らしながら、禁止道路を渡る我々をどう喝する様に、直近をスピードを上げて駆け抜ける。地獄を見ることになる。「こわい!!!」


ここは天国、ゆっくりと車は止まる。気がつけばすでに数台が止まってくれている。対向車線も合わせると十数台、思わずぞれぞれの車に会釈をして急いで横断を終える。目の合った運転手いずれも穏やかな顔をして笑みさえ浮かべている。
 
恥ずかしさにおろおろする。汗が吹き出す。「神様は責めない!!」
天国のルール・・・もう私たち夫婦が横着することは絶対にない。

 

 

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