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24) ヨットと少年

夕刻、Yacht ClubのBer、しづかな時間が流れる。日没には今しばらく時間がある。「天国」を垣間みた人はいないけれど、ここはそれに近いと想像を掻き立てる。 昨日買い求めたゴーギャンの画集、少し回ったアルコールが勝手な想像をふくらませている。ゴーギャンも途中一「天国」を後にしている。あたらしい土地ヨーロツパを遍歴、その頃の作品は他の作家の影響をもろに受けた作品ばかりで、オリジナリティに乏しいのが多く、結局芽のでなかった。思い直して島に戻つた。・・・・・ 静かでしあわせな時間が、彼の代表作を次々描かせた。

     
ヨットクラブのバー、ヨットの係留が眺められる外のデツキに、ワイフと私は座している。サンセット後、小さなヨットが入港してくる。入り組んだ水路を、風で走るを船をあやつるのは難しい。
ヨットを経験したことがある。入港出港はセールを降ろして、機関でするようルールづけられている。そのためにエンジンを搭載している。エンジンの方が風に頼るよりは操縦性は数段ますため・・・・
     
船は1人より2人であやつった時容易い。それだけに単独航が冒険としては評価される。船が小さいと風に過敏だ。デツキに近づいて風が息をすると船は急に走る。方向蛇とキール、を引き抜いてデツキに投げると、素早く飛び下りて力で艇を止める。10才に満たない少年だ。とりあえず艇を桟橋に引き上げる。2メートル足らずFRP製だから軽く、なんとか引き上あげる。それでも引きずりあげるという表現がぴったりする。陸に上がった船がもう暴れることはない。

帆がバタバタとつり上げた魚があがくようにはためく。遠くて仔細は見えぬがロープを解いて、これが簡単では無さそう。しばらくロープとの格闘が続く。やっとセールが降りる。
小さい船は格納のことを考えて、マストは装着、脱着できるようになっている。セールは芝生の上に広げる。マストは担いですぐ横にある置き場に運ぶ。桟橋に船を置いたままホースを引いてきて艇を洗う。小型艇の格納庫が後方にあり、前は芝生になっている。海水に遣っていたから使用後の手入れは怠れない。
     
ヨットを友人のT君に教わった。大学のヨット部出身のT君こんな諸作法にことにうるさかった。日本人は楽しむよりは「○○道」に仕立て上げたがる。船に乗るよりメンテの時間の方が長く、船を洗うことを私たちに強制したように思えた。

少年の作業を見ていると、使ったから海水を落とす。これならば当然のこと、誰もが理解できる。休日ヨットに乗る楽しみで来た仲間たち、乗る楽しみを後回しにして清掃点検、楽しむことに禁欲的な「ヨット道」は疎んじられ、最後はいつも私と2人だった。
その割には装備の点検が充分だったかというとそうでもない。プライベートなレースに参加して、途中棄権することしばしばだつた。レースが始まってすぐハリヤード、帆を張るワイヤーが切れた棄権は、初歩的ミスで、その日停泊した川の下流、どぶの匂いと蚊に悩まされた思いでは、思い出してもお笑いものだ。頭で考えた点検は使うことによって知る点検と見事に違っていた。     
 
「よいしょ!!」片側をもって船を返す。ホースの水が船底に残っている。
 ここまでは一人でできた。
     
3〜4才くらいよちよちあるきの子が、桟橋の裏返った船に近づいてくる。よたよたした心もとない足取り。離れて見ている私達の方がヒヤヒヤする。すぐ横は海面、「親が居ないの?」と飲んでいるジンジャエールを置いてワイフが呟く。

ご存知の通りハワイはサーフインのメツカ、冬場はジョーズと呼ばれる大波を求めて、オアフの北の海岸ノースショアに、サーファー達が集まって来る。プロの競技会もあって波との華麗な格闘は、見ているだけで魅了される。このサーフィン、ハワイのどの浜にいってもサーファーがいる。しかしみんなが上手なわけではない。波の大きさと自分の技術に応じて波と戯れている。
     
そう、「原点は遊び」遊びの中で学ぶ。また「学ぶ」という感覚は、教え育てるという教育的発想に比べたら、能動的で自らの参加で始まる。波との遊びの中で段階的に、サーフィンの知識を身に付けて上達する。見事に本人の技術の段階に応じ使う海岸は別れているようだ。波とのお遊びがやがて応用編へまで昇華され、身体が覚える。

芝生にしばらく干したセールを折り畳む。船が大きいと帆も大きく、三角の帆を四角にまとめるのも難しい。我々の船これもルールがあって少しでも違うとやり直し。今ヨットハーバーに係留されている大型艇はセールを降ろして、そのままカバーをかけるので、艇から帆をはずす手間は無くなった。

黙々と続いた作業。駐車場から女性が姿を現わす。先の小さな子供は母親と一緒に来た弟、時間を合わせていたのだろう。声までは聞こえない。母親が手伝って桟橋に置かれたヨットは格納庫、中段に収納される。ようやく辺りは夕刻の濃い気配が漂う。

昼とは違う風が通り過ぎる。外灯に灯が入る。オレンジ色した光が幾つか海面に映っている。海面に動きがあるのを教えるように、オレンジの光は縮みの模様で小さく揺れ動く。

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