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28) アロハタワー


大平洋真ん中に位置する島ハワイ諸島、航空機が発達を見なかった時代は、当然主要交通手段は船であった。この玄関口がアロハタワーである。航空機の時代になって、午前中早い到着便団体客が時間調整と、オプショナルツアーの確認などで、一番先に連れてこられるのが、ここというのも因縁を感じる。
何を隠そうわたしもそうだった。40数年前のほとんど記憶として残っていないなか、現存するコスメティック、それも香水を専門的に扱う店の、当時そのままたたずまいに出逢う度、その日が甦る。ハワイへ来た人の一里塚がアロハタワーやも知れぬ。

「あこがれのハワイ航路」は日本人の「旅」のというより「夢の原点」として、いまも生活の折々に心のひだに触れる。アメリカからの航路も同じく、時代をになった船が、今もネバーアイランドをめぐる観光船として活躍している。昨年その仲間に新造船が加わった。
遡ればオーストラリアからの航路が比較的早くから利用されたようだ。動力の乏しい時代、風や海流を利用した原住民の多くが、ミクロネシアからポリネシアへ移動してきた歴史を観ても、この航跡の魅力を証明しているのでは無いだろうか。定かで無いが「サマーセツトモーム」の著書中にも、オーストラリアからハワイまでの船旅に関する諸々の話があったはずだ。

ワイキキのホテル「モアナサーフライダー」と「ロイヤルハワイアン」この2つのホテルは創立が古く、今でこそカラカウアに面しているが、その昔は海側が正面玄関だった。島への客は海から到着したのだ。面影は充分残っている。

一旦帰宅してアロハタワーへ・・・何も無いが滞在中は一度は立ち寄りたい。海外行路の大型船がピアに停泊中。船というより高層ビルを想像した方が正しいほどの偉容・・・

別の桟橋からサンセットクルーズの船が出る。ここの所春休みにはいって増えたきた日本人観光客がつぎつきと集まる。この国の人たち不思議と団体で集う。昨年もこの船を眺めていて、出帆時の大きな汽笛に驚いて泣いた孫娘。「この音でわたし泣いたの」と本人が・・・・今日は出て行く船を見送っている。アロハタワーにモニュメントとして飾られている「少女の像」に背丈は負けない。

「ゴードン」(Gordon Biersch Brewery)この店は名前どうり、地ビールで有名な店。ついでにいうと常夏のハワイ、冷えたビールを「キューット」と思うのは日本人・・・・・当地では生温いのが普通だ。

数年前中華街での食事の前に、わたしたちとT君夫妻で立ち寄った。大統領選の速報が入って来て、ハワイで支持率の高い民主党「ゴア」が「ブッシュ」に破れた日だ。僅少差でマイアミの票を数え直したり、後々ごたごたもするが・・・・
「どちらを支持しているのか?」と質問したら「ゴア」・・・・バーカウンターから「君たちはどちらの支持だ」という質問に「われわれは小泉だ」と冗談を飛ばした。
それが切っ掛けで、「これを食べろ」「あれを飲め」と注文していないものが大判振る舞いで次から次と出てきた。その上こちらの料理は量が多い。支援者が負けて「やけくそ!!」の酒盛りが開かれた。
   
結局予約しておいた中華を断った。最後にビアーグラスまでもらった。今もコンドに記念品として飾られている。ときどき出して使う。選挙が「ブッシュ氏」でなければ、アメリカの歴史は、いや世界の歴史は確実にかわっていた。イラクの戦火も起こらなかっただろう。ビールが苦い・・・・

昼遅い時間に「朝日食堂」で賎しんぼうをしたからからお腹は空かない。
わたしたちは飲み物を、娘と孫娘は食事を、枝豆とリブステーキにピザ・・・枝豆は日本人メニューのみ・・・塩味が効いてなかなかのものだが、付き出しというにはあまりにも量が多く、大皿にてんこもり・・・もう一つこちらのビール、私にはもう少し冷やして欲しい。

個人差はあると思う。それでもハワイの食べ物はそれほど悪く無い。「美味しい」「不味い」は普段自分達が馴染んでいる味覚と、現地で出逢うものの「差」が判断基準になる。ということは日本料理に関するジヤッジが当然一番厳しい。余程で無いとこちらで、積極的に日本料理を食べる気にはならない。しいて「手打ちそば」というシンプルで料理といえないものだけだ。純日本そばの店、繁盛していたと思うのだが最近店を閉めた。

醤油の味が恋しくなる時がある。こんな時は上質の中華料理が好ましい。ワシントンDCでホテルのコンシェルジェに紹介されて訪れた中華料理、出てきた麺が「うどん」だったのには参った。質の高い食文化は、背景に「食材」の供給源があってはじめて成り立つ。
ハワイでは日本料理の食材は「納豆」から「とうふ」など何でも揃う。そして味もそこそこだ・・・ただしとうふの賞味期限が1月以上あるというのは腑に落ちぬ。

エスニック料理は当方が外国人だから「本物の基準」が曖昧なこともあるだろう。許容範囲が広くなっているやも知れぬ。しかしメインランドから来るアメリカ料理・メキシコ料理・イタリアンやフランス料理、これらは今やそこそこの大都会では当たり前、中華料理は97年香港の中国返還時に、現地オーシャンターミナルの店を畳んでハワイへ戻ってきた本格派もある・・・
ハワイで驚くのはアジアのシーズニングを多用した、環太平洋(パシフィック・リム)と呼ばれる独特のジャンルの料理の数々に舌鼓がうてる。
アランウオーン・ロイズ山口・サムチョイなどハワイを代表するシェフ達だが、彼等はいずれも片親が日系だし、民族としてはアジアの血が混在している人たちだ。

日は暮れて行く。娘のオーダ、ハーフサイズと指定したリブ、濃厚なソースで少しビールがすすむ。肉は本場その中でもリブステーキにとどめを指す。昨今は日本からきた友人達の中で、「アメリカの肉は大丈夫か?」と質問する人たちも出てきた

何が何でも肉大好きということは無いが、「安いし」・「種類も多いし」・「脂身の少ない」フィレなど、形より厚みの方が分厚いやつ・・・これはもう宝石のような日本ステーキが最高だと信じているから、日本ではめつったに食べられぬ・・・・その気になればこれが毎日でも食べれる。可哀想な日本人・・・・

幼子に「食べず嫌い」というのがある。大の大人が恐る恐るチヤレンジして、楽しめるはずが無い。そんな質問の彼等にはあえてお薦めしない。
旅のたのしみは「異文化・食文化」との未知との遭遇である。人生「人の倍生きて」楽しむ事を望んでも可能なわけ無い。しかし未知との遭遇の数が多ければ、倍楽しんだことにもなり得る。遭遇を避けて人生楽しめる範囲が、狭められるのは惜しいけれども、他人が強要することでは無い。

すっかり日は落ちた。先ほど出帆したサンセツトクルーズもぼつぼつ帰港している頃だ。駐車場に戻ろう。食事の最中に驟雨が通った。ハワイでは朝晩驟雨が通る。コウラル山脈の陰になっているワイキキ・アラモアナよりよくしぐれる。停泊中の豪華船はイルミネーションが、通り過ぎた雨に潤んだ光りで身を纏っている。

何気なく口にした指に摘んだリブステーキのソースの味が残る。

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