32) フレンチトースト
人生はフイクシヨン・・・・アトキンソンの信号を足早にアラモアナへ、ハワイ滞在中はキャンプインのつもりで歩くことを枷ている。それでも歩く速度は大分遅いようだ。信号を一緒に待っていた白人の若い女性、大柄ではあるが既にパーキングへ通じる階段をのぼる。
アラモアナ、店は閉じられひと影もまばら、早朝のSCは別の顔を見せる。目的地は西の端、反対側からSCを通り抜けることになる。歩きながら今と同じ感覚が甦る。
繁華街の真ん中で育った。学校へ通った日々は、まだ眠りから覚めぬ街を通う。場所がちがうだけで、眠りから醒めたばかりの繁華街を歩く。「これは心斎橋筋や・・・・」人生も未知や未経験との邂逅は、案外少ないのやもしれぬ。
目的は最近見つけたLonghi'sというレストラン。夜立ち寄ったら、朝食が取れるとあった。何でも試してみるべきだ・・・・というのが私の身上だ・・・・
シアーズの前、別棟で少し分かりにくい。そのためにここを見逃していた。エレベーターのボタンを押す。確か4Fだったと思う。戸は閉まるがエレベーターは動かない。なんどかボタンを押し直したがダメのようだ。
SCを清掃する人がいる。事情を説明したら向こうにエスカレータがあるから、あれで上がれと指示される。専用のエレベーターでないと、おもいながらエスカレーターで・・・・
案の定Longhi'sヘの通路はなかった。賢い従業員がいる。清掃の手を止めて携帯をかける。エレベーターの前のメニューに店の番号がある。
「いつもはもう少し早いのだが今朝は8時に店をあけると」・・・丁度時間だ。
勿論私が一番最初の客だ。広い店内テーブルの数多く、一つ一つにテーブルセッティングをしている最中だ。それでもその1人が私をテーブルに案内して、椅子を引いてくれる。「この席でよいか?」
4階のオープンエアーの店内から、アラモアナビーチの海が臨める。西側に建つコンドは、あられもなく朝日のもと全貌をみせる。眼下の駐車場にもまだ車はない。
天井に取り付けられ扇風機が空気を動かせる。暖まる前の少しひんやりした風が通り抜ける。この風がこの島の魅力だ。
朝食といいながらも、メニューは豪華なものだ。「チヨット違ったかな・・・」
ハワイに1人でいて一番困るのが量の多さ、皿数を選ぶなどとんでもない。
フレンチトーストを選ぶ。
冬期への季節の変わり目、はざかいを行き来する天気がここ数日続いた。久しぶりに快晴の空を写して海が蒼い。ノースショアよりワイキキの波が高いとTVは報じていた。席からはそこまでは見えない。
外人客が二人、現地の男性が独り、この人にお連れが3人見える。そして独り客、ぼつぼつ増える。
コーヒーのお変わりを告げる頃、オーダーが届く。大振りの真っ白い皿に、超厚切りのフレンチトーストが4枚、キツネ色に焼いたパンがパウダーシュガーにまみれいてる。その上にイチゴがきざまれてこれも、どさっとというほどの量が乗せてある。
オーダーの時に何かフルーツの名前を聞かれたが、ストロベリーと答えた。それがトッピングの果物のことだったのやもしれぬ。聞きそびれた。
「Wooo」ボリュウムもさることながら、盛り付けのきれいさに息を飲む・・・
バター・シロップ・ジャム数種類を彼女が配る。
サーバーしてくれるウエイトレスの顔を見る。信号を足早に駆け抜けた娘、遅刻して店のオープンが遅れたはずだ・・・・・・
「至福のひとときという言葉」がある。あくまでも至福は一刻、瞬間やもしれぬ。
蒼い海に波頭がくずれる時に作るの白い軌跡が、くりかえしくりかえし永遠に続く。
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