2-21) 新インフルエンザ
◯病気
かぜは強いが相変わらずお天気はよい。投薬を止める・・・・寝ていても熟睡できぬまま、いろんなことに思いがぐるぐる巡る。人生の総括という大仰なことではないが・・・・くすりを飲もう。食事をしよう。風呂に入ろう・・・・この日常の些細なことに「やろうとしてから時間がかかる」心に引っ掛かりがあってこれを解決しない限り、出口のない思考が、うつつの中でエンドレスで意味なくくり返される。そう一昨日眠れぬ夜はこの妄想に悩まされ続けて夜があける。
決断にそう狂いはない・・・・若い頃「部長はいつでも良いと仕事を依頼しても、すぐしとかないとだめょ」というのが女子社員のあいだでも通説だった。手の内を読まれていた。どんないいことも決めても、着手するまでに時間がかかるのはよくない。ましてやらなかったたら云うに及ばずだ。成果主義が薄い役所などは最たるものだ。「ダムの建設」に60年費やして未だ計画は手を付けたばかり。「ダムがなくとも60年間何の支障もなかった。もはや不要の何よりの証明だ」と友人のM君が喝破する。
妙手を考えてやるのに時間がかかる・・・・・熱にうなされて朦朧として夢の中とはいえ、案外自分の本質をえぐりだしたかもしれぬと、病との挟間でまたまた落ち込む。後は「来し方行く末」意味ない妄想が出口のないまま延々と続く・・・・・
誰だって海外生活での疾病には不安がある。「最悪半日あれば日本に帰れる」というのがこの島でロングスティを決めたときの覚悟だ。10年以上滞在したから、必ずしも体調万全ばかりではなかった。
4月初めまでハワイにいて帰国、5月の連休に友人に誘われてトンボ帰り・・・現在のように高齢者に対するインフルエンザの予防接種も普及していなかった。ハワイでワイフがダウン・・・・結局日本から持って来てハワイで発症した。初めて医師に罹った。Y医師中国系、日本の医大の出身者、診察の言葉にさして不自由はない。所見は間違いなくインフルエンザ(後で隔離されることもあると聞いた)・・・・処方せんをもらってドラッグストアーへ・・・・ワイフは日本人によくある病院好き・・・要するに神経質で用心深い・・・本当に憔悴しきっていた。「先生点滴注射をお願いします」日本ならさしずめ医師に伝えるはずだ・・・Y先生は栄養ドリンク「ゲーターレイド」を飲んで、できるだけ休んで下さいと取り合わぬ。
薬局で調剤薬を処方してもらって帰宅・・・巻頭にも書いたように病魔と闘う間の神経は正常ではない。不安にも掻き立てられる・・・ハワイで初めて処方された薬が間違っていたわけではない。今度はベットからも立ち上がれぬことになった。投与量が日本人と外国人とでは違ったようだ。「日本に帰りたい・日本に帰りたい」とうなされて叫び続けた。
「お年ですから・・・ご安静に・・・」がY先生の決まり文句・・・・友人との島への旅行はお断りするとして、落ち合う場所が空港到着ロビー、携帯デンワの持ち合わせもなく、このときの難儀は今も思い出すと心が痛む。
息子・娘たちから電話が来て「インフルエンザ・・・日本のように寒暖の差が大きい国へ無理して戻ってくることなどない」ときついお達し。ワイフも連れ合いの言には逆らっても子供たちの言葉に弱い。結局ハワイで全快した。
かかった費用はカードで処理されて、確か保険の手続きをして処理したはずだ。外国での高額医療に苦い思いをした記憶はない。海外では保険をかけてきたとしても、治療費はひとまず自分が清算する・・・・帰国後必要書類を保険会社に提出して処理される。
日本の健康保険が破たん寸前だ。診療費を一旦自分で精算する方法は、日本の医療保険の問題点・・・患者が治療費の負担額しか支払わない・・・を改善できる一つの方法だと教えてくれる。
「不安というストレス」は未経験が思いを増幅する。日系人はもちろん日本人に対する診療環境は確立されている。この一件で病気に対する「不安」に免疫ができた。幸い我々夫婦が医師に罹ったというのもそのときがただ一度の経験だ。
孫娘が熱を出した。幼児の病変は急変するからと心配して アラモアナセンターの小児科 S医院へ、予約の電話を入れる。受付で名乗るとディズニー・アンパンマンン等のキャラクターの部屋が数室 、その一つの個室に通される。確か 消防自動車の形をしたベッドで座って待つ。S先生が入ってきて診察が始まる。日本のような先生がおられる診察室はない。患者が待つ個室が診察室だ。患者同士が込み合った待合室でという心配はない。
「軽いかぜ」と診断された。日本からもかぜのシロップを持ってきている。処方は「カフシロップ」ロングス(薬局)でもらう。くすりを嫌って飲まない。なまじ理解力があるだけに難しい。結局くすりを飲ますのに苦労する。この子は幼児期「くすりを飲まない子はお注射しますよ」と先生に脅かされたら「注射の方がいいもん」とうそぶいた。しかしハワイのお医者様は「大好き・・・・」
掛かり付けといわずとも万一を考えたら現地医師に、コンタクトできたことは結果的によかった。本人はさんざん泣いた。耳からの熱もあるので調べた。耳の掃除は驚くほどの「耳あか」すっとしたと思うが泣くのも当然か?
人間、通称「かぜ」という諸症状に年間数度は罹るそうだ。免疫力の低下時に罹るのだろう。ハワイでもこの「かぜ」の諸症状が流行るときがある。最初は来島者が持ち込むだろうか? それにしても気候温暖、湿度もそこそこ高く、近隣には全く大陸はない・・・・人口密度は日本の比ではないだろう・・・・海に囲まれた小さな島・・・・たえず強い風が島を吹き抜ける・・・・海水は汚染されていてもここの空気は、絶対に汚染されていないと頑固なほど信じている。この地でなぜ感染症がまん延する可能性があるのか・・・・私の医療知識では理解できぬ。
◯新型インフルエンザ
今年来島来どうも鼻とのどの調子がおかしい。ハワイに滞在していて稀にこの状況なる。鼻とのど以外、熱も無く抗生剤を飲むほどのではない。先週娘夫婦に孫がきた。
みんな咳とくしゃみ・・・お互いが「感染症」のキャッチボールを繰り返したためだと決めていた。彼等が帰国して数日が経つ。日本に帰った彼等は疲れもとれて快調だそうだ。ハワイ組の夫婦二人が相変わらず・・・・・体調が十分でないと気力も萎える。
人生案外嘘みたいなことが起こる。上記を記した日。昼遅くワイキキへ・・・ワイキキ・カラカウアをを東から歩く。ABCストアーで日本人従業員と出会う・・・「マスクは扱っていませんか」「Woow 外国人ならマスクをした人を見たら、遠巻きにして避けられますょ・・・・でも日本人なら大丈夫」・・・・「シロキヤさんに売っています」と親切なアドバイス。ついでに問う。「それはそうとハワイで悪いかぜがはやっていませんか? 鼻とのどに不快感のある・・・」「えーっ・・・それはハワイ島からの火山灰・・・今年1月は大変でした。2月になってやっと落ち着きました・・・大勢が病院で治療を受けました。私の主治医も火山灰で休診しました。医者がですょ」ジョークが入る。日本語のイントーネーションは沖縄の人だ「アレルギーのある人はもう大変・・・目・鼻・のど等はよく洗って・・・外出を慎むように」と島民には広報がありました。理由は分かった。「ハワイにいる限り治りそうにない・・・覚悟を決めた」
ワイフがシロキヤでマスクを買ってきた。日本製だ。一袋に2枚入っている。1枚を自分が使ってもう1枚をわたしのすすめる。普段はワイフと二人の生活、マスクを必要としているような環境にあるとは思えない・・・ヒョツトして外部と無秩序に綱がっているものがあるとすればインターネットだ・・・・「ウイルス」絡みの悪い冗談が浮かぶ。
二人してマスクをしてアラモアナを歩く・・・・前方から近づいてくる外国人・・・・・見事といえるほど数メーター先でわれわれを避ける。
ラジオの日本語放送・・・アナウサー仲間が「かぜ」で大変だとしゃべっている。一人はインフルエンザで隔離されたと・・・・黙ってマスクをかける。この局のに視聴者参加番組がある。分からないことを問うと誰かが答えてくれる。
「かぜ」がこの島でどうしてはやるのでしょう。「どなたかお教え頂けませんか?・・・・」
ワイフが昨日から電話帳を熱心に見ていた。医者欄が折ってある。自分で行動することはできない。こうなると思い詰めるタイプ、だんだん自分で調子を崩す。若い頃母親が逝った。トラウマになっている。不安が病気を作る。結局最後まで調子が戻らず医師にかかることになる。上気道感染と血圧の上昇(190〜170)とんでもない数字だが、こちらも慌てていて言葉をつなぐことができぬままだ。日本製かぜ薬の連用によるカフェインのとり過ぎと診断される。くすりは決められた範囲で使用効果がないときは中止すること・・・かぜをこじらせたというところか?
アトキンソン通りは山からの風が吹き抜ける。それが高層のホテルとコンドミニアムに当たって、ビル風として勢いを増す・・・この日もこの風に気力の萎えた彼女、数メートル吹き飛ばされる。
ワイフの気を落ち着かせる工夫はないか?
結局、Y先生に再診の予約を入れてワイキキの診療所へ、血圧(140)と体温を再度測る。日本へ帰るまでどうしても、血圧が高いときの処置として血圧降下剤を処方を・・・ハワイでの安心料だ・・・診察料は$120に決まっているようだ。日本とほぼ同じ程度でないか? 日本から常用している薬は継続して飲んだらよろしい。女性と高齢などいろいろ説明を受ける。何より医師の診察が彼女には特効薬と思える。少しは気が落ち着いたようだ。

昼をワイキキアウトリーガのテラス・「デューク」で・・・・モアナサーフライダーの「バニアンバー」、ロイヤルハワイアンの「マイタイバー」、いづれの席に座っても、これはもう海と空を舞台にした劇場だ。演題はワイキキの海と空、ここの陽光はアラモアナとも違う。まぶしい日差し打ち寄せる波が光を跳ね返してキラキラ踊る。目の前ビーチは裸の男女がくつろぐ。ホテル群が屏風のように取り囲んで風を遮る。山側の冬場の空を見せない演出もさすが一級の保養地だ・・・ここに身を置くだけで気分が解き放たれる。ワイフと二人ゆつくりと昼食で過ごす。食事前からビーチで体を焼いている若い娘二人、何度もオイルを体に塗っていたが、我々が席を立つ頃にはいい色に仕上がっている。
ここ数週間の「鬱としい体調」から解放される予感が湧いてくる。万一ここでくたばったとしても文句はいうまい。
息子にこの話を電話で伝える・・・「旅行者にはハワイといえばワイキキしかない」というのが息子の持論だ。「毎日ワイキキへ行くように・・・・」少し安心した声が受話器から聞こえる。
この年、帰国後しばらくしたらメキシコから新インフルエンザの話。素人のわれわれには、ウイルス・・・・なにが新でどれが旧かも分りにくいし、メキシコの何処が発生源で? なにが媒介したのか確定できずに、目に見えぬものを水際で防ごうという対策も意気は良しとして、日本が無菌いられることヘの期待はあまり持たないでいます。そしてハワイからの帰国者に罹患者がでる事態が起こる。
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